日常の不満から、欲しかった!のアイデア商品を開発する企業
自らを「変わった人が集まる会社」と紹介してくれた企業さまは、初めてかもしれません。
個ではない「企業」と考えた場合、時にその表現は多少の躊躇を含みそうなものですが、お会いした株式会社富士さんにはそれが一切ありませんでした。
「変わっている」とされる属性の中の最大級のポジティブが、晴れた日の青空のごとくスッキリとしていて、話すだけでこちらまで元気が伝染する、そんなパワーのある企業さまでした。
間もなく50周年を迎える株式会社富士さんは、日用・美容雑貨を中心とした商品を企画・製造・販売する企業さま。
「どうぞ~」と迎え入れられた後から応接室の椅子に着席するまでの時間は、過去一、時間がかかったかもしれない。
時間がかかった、と言っても距離があるとか入室チェックが厳しい、とかではない。
見る物が多すぎて!

応接室しかり、応接室周りにある打合せスペースしかり、ぐるり整然と。
でいて、サラっと見渡すだけでは物足りず、どれも一つひとつを目で追ってしまうようなパッケージがズラリ。
これまで富士さんが企画・製造した多種多様な商品が陳列されているのだ。
もちろん心の奥の奥の奥では、早く用意していただいている応接室に大人らしく大人しく、まずは着席して「お話を~」というスタートをしなければ、とは思っている。
でもいちいち足が止まるし、手が伸びる。
お!このサイズのマスクって女性にちょうどいいですよね
あ!子供用マスクって最近あまり見当たらなくて探してる人が多いですよね
え!美容液がこの値段で??
あ!CICAコスメだ!やっぱりCICAは気になりますね
わ!これ、掃除するのにめちゃくちゃ便利そうじゃないですか!
どれも反射的に出てしまう言葉と感情の「!」過ぎて、買い物に来てるんじゃないんだから…と自分にツッコミたくなる。しかしこちらの反応に「それね!それは~」と興味深い説明を付け加えてくださるので、へぇほぉとなり、最後には「これはいい、欲しい!」なんて言っていた。

暮らしをテーマに、喜ばれる商品を
富士さんの商品は日用雑貨・美容雑貨が中心、つまり暮らしの中にある。
私たち生活者が日々を暮らす中で「あったらいいな」と望む「使いたくなるもの」をカタチにしていくのだ。
さらにそれが「なくてはならない、ないと困るもの」になる。
そんなモノづくりを富士さんは目指している。
美容、掃除、衛生、アウトドア、健康、フレグランス…等々。
富士さんの商品を通して日常を見てみると、暮らしの中には本当に、様々なジャンルがあることに気付かされる。
最新のトレンドを常に情報収集している富士さんの商品には、確かに!と思うものもあれば、私がまだ辿り着いていない流行りや傾向を反映した「そうなんだ!」というもの、これは時代に流されずに長く愛されそうだと直感で感じる商品も。
しかも価格帯を見る限り、こちらもユーザーさんのお財布に寄り添っているようにも感じた。
「単に商品を提供している会社ではなくて、手に取った人の毎日が、快適だな~とか、便利だな~とか。そんなふうに日々が豊かになってもらいたいんです」という。まさにその想いが届いてか、「あわわ」や「CICARICHクリーム」など、今もなお大好評を得て富士を代表するロングセラー商品となっている。
中でも「あわわ」は、開発途中の段階から携わっているメンバー自身が「泡」に驚いたとか。
そんな大げさな…と思うかもしれないが、実は私も泡立てにチャレンジさせてもらったので、知っている。
「あわわを使って驚かない女性はいない」
そう開発メンバーが言い切ったとおり、もこもことできあがる「弾力のあるきめ細やかな豊かな泡」に笑ってしまうくらい驚いたのだから、当時の開発メンバーたちの興奮には、共感しかない。
今また、好評だった「あわわ」のように、たくさんの人に「これいい!」「なにこれ!」と感動してもらえるような新たな美容雑貨を企んでいるとのことで、時が来てカタログに登場するその日がやってくると思うと、待ち遠しくなる。

医療現場で働く人のヒリつく心も、軽やかにしたい
「あわわ」の泡にどれだけ驚いたかで盛り上がっていると、ブルーのデニムシャツをスタイリッシュかつ軽やかに着こなした代表の小澤社長が現れた。
創業者である小澤社長に「お勧めしたい商品」を聞いたらどれを選ぶんだろう?
そんな興味が突如として湧き上がり、そのまま聞いてみる。
暮らしのあちらこちらで活躍するであろう数々のアイテムの中から、小澤社長が迷わず手に取った商品は「ナースウォッチ」。
「これだね」と、手のひらにとても大事そうに優しく置く。
暮らしではなく、医療現場?
頭の中で思いがけなく急な場面転換が行われ、白衣を着たナースを思い浮かべる。
「これは日々の中でも医療現場っていう、時には人の生命に居合わせなきゃいけない厳しい状況の中でも懸命に尽くして働いている人たちに、少しでも心が癒える瞬間があって欲しいと思って作ったんだよね」
フォルムやカラーの柔らかさが、その想いの優しさを物語っている気がした。
聞くと、デザイン性もさることながら機能面も耐久性も、小澤社長が細部までとことんこだわり、品質を追求した自信をもってお勧めする優れものだという。
特に、時計の針を動かす動力源でもある「ムーブメント」は、一分一秒の戦いの中でも正確に時を刻めるようにと、ずっと日本製ムーブメントにこだわって使い続けてる。
他にも、暗闇でも時間が認識できるよう蓄光文字盤が使われていたり、パッキンを入れた構造になっていて濡れても安心して使ってもらえるようになっている。
手のひらにすっぽりと収まっているこの小さなアイテムの中に、こんなにも「誰かのため」という想いが詰まっていたことに感動する。

「いい商品」のルーツは、日常の中の不満だった!?
こんなふうに「いいね!」と心を掴まれる商品を企画するにはきっと、「こういうのがあったらいいな」を日々アンテナを強めに立ててキャッチし、こんなのはどうだ?あんなのはどうだ?と考え続けているのだろうと想像した。
そこで、実際に企画に携わる人たちはどんな感じなのかと、そのまま、私の想像を取締役の小澤さんにぶつけてみたところ、
「僕はもうひとつ、必要なものがあると思っていて。何だと思います?」と逆質問。
商品を生み出すために必要なもの? 調査力?設計??
絶対これでしょ!という精度まで辿り着けない答えばかり浮かぶが、順にぶつけ返してみる。

「違います(笑)。正解は「不満」です」
不満!?! 想定外なんてもんじゃない。想定圏外のところから飛んできた回答に、目が丸くなる。
頭の中に「企画に必要なもの」へと繋がるストーリーが描けなさ過ぎて、早く真意が聞きたくなる。
持論ですけど、と前置きしながら小澤さんが話す。
「日常で、これ使いづらいなぁもう!とか、なんでこうなってんの!とか、ありません?
そういう「不満」を感じられないと、良いと思ってもらえるものづくりはできないと思うんです」。
なるほど!!と手を打つ勢いで納得する私に、小澤さんが続ける。
「だから、例えば商品企画に向いてる人はどんな人?と聞かれたら、「生活の中に不満がいっぱいある人」ってなるかな…あ、ちょっと表現が違うか。「生活の中の不満にアンテナが張れる人」かな」
私が想像できていたのはあくまでも企画する人の「行動」の一例列挙に過ぎなかった。
「もちろんその行動も必要なんですけどね」と小澤さんに認めていただきつつも、それ以前の、本当のゼロイチに至るときにある「火種」のような原点には全く目を向けられていなかった。
そう考えると「アイデア」というワードが着飾られたものに見えてしまうから不思議だ。
これが物を生み出す人の視点か…面白い!
そんなことを感じながら、富士さんの「あったらいいな」「ないと困るもの」のモノづくり精神に触れた気がして嬉しくなる。
明日の暮らしがもっと楽しくなる
会社も社員も、共に働く仲間に心を寄せる企業
「変わった人が集まる会社」と自己表現する小澤さんの言葉を思い出す。
先程の「不満にアンテナが張れる人」という点からして、感性が豊か、または感性を伝える表現力を持つ方、が多いのかもしれない。
なぜなら訪問してから今に至るまで、最初に説明をしてくれた方もお茶を出してくれる時も、何人かのスタッフさんたちが「こんにちは~」と私の前を通り過ぎていく時も、皆さんが纏っている雰囲気が「オープンマインド」な感じがしていた。
その場を通り去るという方は、急いで駆け抜けて行かれる方以外、一人もいない。
それどころか、一瞬立ち止まって会話に入ってくれそうな雰囲気もある。
私たちに興味をもってくれて、全身で「富士へようこそ!」と言っているようなアットホーム感があり、働く人たちが元気だ。

「自慢のひとつになりますが、富士は本当に「働きやすい会社」だと思います」。
そう教えてくれたのは、富士さん歴20年以上のベテランさんで、商品についてとても詳しく教えてくれた商品企画の川合さん。女性が多く働いていて、産休や育休などを経てから復職される方も多いのだとか。
確かに復職という制度はまだまだ、会社的にはOKが出ていても、前例がないとなかなか難しいと聞く。
その前例がすでにあって、実際に復職してパワフルに働いてる人がいる富士さんは、会社はもちろんのこと、一緒に働く人たちみんながお互いを尊重して理解し、助け合っているのだろう。

「うちの社長は従業員のことを本当に大事にしてるんです」、と小澤さんが付け加えてくれた。
聞くと、小澤さんのお父様(社長)が創業された当時、ひどく「人」に困らされた経験があるそうで、その時の辛さや想いを忘れずに「人を大切にする」ということをずっと大切にされているそうだ。
ここまで富士さんのことを書いてきて、ふと気づく。
なんだかずっと、あったかい。
モノでも願いでも、過去でも未来でも、富士さんの話はすぐ傍に「人」の存在を感じる。
暮らしという庭における豊かになる楽しみを、人を想いながら全力で楽しんでいる企業さまでした。
富士さんのしごと
株式会社富士さんは、私たちの暮らしの中にある「ちょっとした不便」を見逃さず、より便利に、より豊かに、思わず人に勧めたくなるようなアイデア雑貨や日用品を生み出してくれるメーカーです。医療用・一般用マスク、コスメや健康・美容アイテム、日用雑貨まで幅広く企画・製造・販売を行っています。1976年創業以来、ただ作って終わりではなく、手に取ってもらえること、毎日の暮らしの中であってよかった!と思ってもらえることを大切に、デザインから使い心地、価格帯等々「日常づかい」としてのバランスが考えられています。
富士さんの取材を終えて
なんといっても「ラインナップの幅広さ」と「人の良さ」が印象的な富士さん。話しているだけで、自分たちが作り出した数々の製品すべてに「愛情」を注いでいることが伝わってきます。日用品も美容品も、正直なところ業界的にはライバル品が多数あるはず。そんな中でも、一度使ってくれたユーザーさんの気持ちをしっかり掴み、リピートしてもらうことも多いというのだから嬉しい。商品・コストパフォーマンスの良さもさることながら、人柄が滲み出る対応力の高さがきっと、ファンを増やしているのだと感じました!