有限会社ウェルディ

製造業の危機を救う、昔ながらの溶接技術

有限会社ウェルディ
手仕事の技で「できない」に応える、トーチろう付けに強い溶接屋

(公開日 2025年10月17日)

工場のどこにいても、遠くで鳴っているようなラジオ。
その上にジリジリパチパチと溶接の作業音が重なって、調和して、工場の中に響く。
火・ガス・電気。危険物を扱っている職人たちは真剣で、こちらに気付かない程、持ち場で集中している。
少し、鉄のにおいもする。

ドラマで映し出されるプロローグか、町工場を舞台にした小説の始まりか。これまでふわふわと空想で描いてきた町工場の「ホンモノ版」が現れたので、しばし佇み、今日この機会をいただいたことに感謝する。

今回の訪問先は溶接業の現場です。

今思えば、この時点の私が知る溶接業は、溶接業じゃなかった。
数時間後、あれほど心を痺れさせられて工場を送り出されるとは、想像していなかったし。

絶えさせちゃいけない、承継される町工場の技術

訪れたのは「溶接なら何でもできるよ」と、どんな依頼にも真摯に向き合う、愛知県春日井市にある溶接業の有限会社ウェルディさん。

黄色とグレーで配色された工場はレトロ可愛く、壁に掛けられた社名は、一文字ずつ角丸の四角に入って均等に並んでいる。スマホが先かウェルディさんが先か、スマートフォンのホーム画面に並ぶアプリアイコンのようで、細かい部分にこだわりを感じる。

1971年の創業から数えると50年以上。
長谷川社長がお父様から事業を承継した1995年から数えても実に30年。
毎秒毎分毎日の「時」は、お客様のご要望に合わせて様々な溶接技術で応えてきた「軌跡」だ。

ひとつのことをとことん追求してきた、変わりようのない日々があるという事実が、承継企業の強さである。

これを溶接のプロと言わずして、なんと呼べばいいのか。
そんなことを考えているとリスペクトで心が満たされていく。

「世間一般からすると、すぐできるようになる仕事ではないな、と思う」と、長谷川社長がピシリと放つ言葉によって、先程の「溶接なら何でもできるよ」が凄みが増す。そして、それって絶対に絶やしちゃいけない技術なのでは、と背筋を伸ばす。

ここで長谷川社長について紹介したい。

先代から事業を継いで以来約30年間、長谷川社長はウェルディの代表として溶接技術をひたすらに磨いてきた人だ。
現在もなお、信頼できる3名の頼もしいメンバーとともに、現役で取り組んでいる。

溶接以外の話だと、少々シャイ。
でも、溶接の話題になると目を輝かせて本当に楽しそうに話すので、その熱がこちらに一直線に届く。

さらに、ウェルディさんの中では最年長にもかかわらず、現場に入ったときの動きは誰よりも早い。めちゃくちゃ素早い。
恐らく、やるべきことの3つ、4つ、5つ先の道筋くらいまで、クリアに見えているに違いない。

改めて。ウェルディさんはプロの溶接屋である。長年、溶接業一筋でやってきた。
その軌跡分、様々な経験と挑戦を繰り返し、他社に負けない豊富な知識とノウハウを培ってきた。

お客さまからのご要望は都度様々で、どういうことだろう?これは難しそうだな、というのも舞い込んでくるそうだ。
でも、ウェルディさんには受け継いできた技術力が高く、溶接方法も幅広く精通していて、最上級に強い。

鉄・銅・ステンレス・アルミなどの多様な素材の溶接ができる。
TIG溶接・MIG溶接・被覆アーク溶接はもちろん、異種材料のトーチろう付や硬化肉盛りもウェルカムだ。

人の手・人の目で繋げる、熟練した溶接技術

ジリジリパチパチ弾ける音とAMラジオの音波に乗るように工場内を歩く。
溶接された製品や無造作ながらも整頓された工具棚を横目に、邪魔しないようぶつけないよう、黒いパーテーションで仕切られた作業エリアへと向かう。
パーテーションの隙間から集中しているスタッフさんの作業を覗くと、強い光を発してパチパチ!パチパチパチ!と何度も火花が飛ぶ。

何分くらい息をのんで凝視していたのだろう。

一瞬の強い力(光)のその中で「溶接されていること」は間違いない、が、目には見えず想像で補完する。
補完しつつもジリジリパチパチと「溶接されていること」を見届けたい、がゆえに、隣のエリアに行くことも忘れて見入ってしまう。

動けない人(私)がパーテーションの隙間からずっと見ているぞ、と気づいたスタッフさんが、ヒーローのようなマスクを頭に掛けて「光、直接は見ないほうがいいよ」が優しく笑って声を掛けてくれた。

薄目の渋い顔で見ていたのがバレてしまった…!
しかし、そのひと言で話しやすくしてくれたと分かり、嬉しくなる。

「これは冷却するファンの羽なんだけど、元々の設計より風を強くするために、この部分をね…」と説明を受け、溶接はくっつけるだけじゃないんだ…と、低かった私の溶接知識がほんの少しだけレベルアップする。

もっと聞きたい!!と前のめり気味な反応を見てか、「溶接用の部材って見たことある?」と、次の知識を与えてくれる。

棒・板・粉、と3種類の溶接用の部材を見せていただいた。それぞれに太さや薄さの違うものが整理された棚に保存されていて、来たる出番を待ち構えている様子。

お客様からの相談の中には、適切な溶接方法が分からないという依頼も意外と多いそうだ。
そんな時には、最適を考えて通常は棒の部材を使うところを、「板状や粉状のものを使った方がいいのでは?」と、提案をすることもあるのだとか。

実際に、板状の部材を使ったロウ付けをご提案し、最適な形でお応えできた実績のことを教えてくれた長谷川社長。
「困って相談してきてくれるお客様に「できない」と簡単には言いたくないからね」と笑顔。

そうだ!ウェルディさんはどんな依頼にも応えられるプロ集団。それが一番の強みだ!

工場をさらに一回りして戻ってくると、図面の前で長谷川社長とスタッフさんで「ここはこうじゃない?」「そうだな、でもこうかもね」と盛り上がっているので、今はどんな打合せを!?と駆け寄り話の続きを聞く。
図面の傍には、見ている図面サイズの何倍もの大きさの製品が置かれていて、2人の作業を待っている。

なるほど。どういう順番で溶接していくかの意見交換だったのかと納得する。
一方でとても楽しそうに話していた空気感を思い出し、「みんなモノづくりが好きだな~」と、少し幸せな気持ちで二度目の納得をする。

前例がないものを形にし最適な方法を導く

溶接業界の今、守るべきものと守るべき理由

製造業にも自動化やロボット化の波が広がり、効率性や精度向上を求められている現状がある。それでもなお、ウェルディさんが手作業での溶接を続けているのには理由があった。
「よく、急にモノが壊れて直してほしい!っていう緊急事態の時に、駆けこみ先として選んでもらうことも多くてね」

聞くと、自動化で動いてる機械ではすぐに対応してもらえなかったり、そもそも機械が対応しづらい溶接もあったりするようで、自動化が推奨されていることはいい傾向かと思いきや、意外にも、この点においては人の手・人の目で溶接する方が素早く直してあげられるのだとか。

自動化の盲点、ということだろうか…と考え込む。

困っている人の声を直接聞くことが多いウェルディさんは常々、
「町工場が減っているからこそすぐにお願いできる場所というのが求められていて、壊れて困って動けずにいる目の前の人に今すぐ手を差し伸べられるのが、人が作業することの強みなんだな」と、自分達の仕事の必要性をひしひしと感じているそうだ。

日々精一杯、自分たちができることを極めている皆さんから話を聞き、溶接知識のレベルがほんの少しだけ上がりつつある今、「そもそも多様な溶接方法がある中で一番難しいものはどれなんだろう?」と、気になった。
「トーチろう付けだね」と長谷川社長が迷いなく回答をくれる。

「トーチろう付け」とは、ガスバーナーやガストーチを使って接合したい2つの金属に直接熱を加えて接合させる方法で、自由度が高く、それでいて複雑な形でも対応できるのでよく使われるらしいのだ、けれども…熟練された技術が必要なのだとか。

「職人が温度の上がり具合を判断しないといかんからね。色の変化や薬剤の溶け具合を見て、タイミングを掴んで溶接する。シンプルだけどコツがいるもんでね」と長谷川プロ。

言う通り、加える熱が強すぎると温度が高くなり過ぎて金属の母体が解けて失敗。薬剤の溶け具合も溶接の強度や見た目の品質にも影響を及ぼすので、着いても成功とはいえない出来栄えになることも多いらしく、難易度が高い工法。熟練技術者になるまでの道のりは遠そう。

「そりゃ溶接の知識や技術は、一朝一夕では身につかないよ」と、気づけば近くに集まってきていた職人さんたちがそうだそうだと笑っている。「どんな溶接にも応えられる職人に育つには、「自分で考えて、手を動かす」、それが一番成長につながるんだ結局。」という長谷川社長のありがたい教えを聞く。

溶接業界で50年以上も活躍してきたウェルディ。
これからも続く会社になることの思いは、どこにあるのだろうか。

「中途半端な仕事をしている会社は残っていないはず。一つ一つ真っ直ぐ真剣に取り組んできた企業がこれからもずっと残る会社だと実感しているよ。」

その言葉は、長年信頼されてきた企業さまだからこその重みがある。
きっとこれからも変わらず、困った人の声に応え、技術力で応え、モノづくりを楽しんでいくのだろう。

ウェルディさんのしごと

有限会社ウェルディさんは、愛知県春日井市にある溶接屋さんで約50年の歴史があります。ステンレス・アルミ・鉄・銅など、多種多様な素材に対してTIG溶接やMIG溶接、ロウ付けなどを駆使し、ケースごとの最適な組み合わせで溶接を行います。時に舞い込んでくる、どうすればいいか分からないというご相談に対しても、「ここはこう直したほうが強くなる」「この材料ならこんな溶接が合う」と、豊富な経験やノウハウから導き出される職人目線からの最適な方法も惜しみなくご提案しています。中小企業から個人ユーザーまで、金属加工に関する困り事は、町の溶接屋・ウェルディさんにご相談を。

ウェルディさんの取材を終えて

お話を聞くまで溶接は、「パチパチっと溶かしてくっつける」くらいのイメージしかできていませんでした。でも話を聞くとそれは大きな間違い。いや、「溶かしてくっつける」という現象は本当だけど、奥が深かった。そう確信させられたのは現場のスタッフさんに話を聞いた時。「僕もくっつけるだけだろ~って思っていたんだよね。知れば知るほど面白い」と。
事実、10分も説明を受けている間に、溶ける温度・溶かす温度・溶かす物・溶かし方・形状…そして技術力の組み合わせが次々と出てきて、図らずも「溶接」という仕事の存在意義や価値の高さを知ることに。その上で、昔ながらの溶接方法に対応できる人が減ってきていてね、と長谷川社長に教えていただき、「ものづくりにおける技術承継の重要性」を本当の意味で分かった気がしました。